研究グループ

栄養神経科学講座(産学協同研究部門)

私たちは、脳の情報処理と可塑性の機能調節を研究しています。 脳は沢山の神経回路で構成されています。それぞれ機能の異なる神経回路ユニットが互いに連携して、効率よく情報を処理し、適応的に動物の行動を制御しています。この脳神経機能は、回路ユニットを取り巻く環境、つまり、体内の状態に強く影響されます。記憶や睡眠といった高次脳機能は、栄養状態でパフォーマンスが左右されます。さらに老化やストレスは脳神経機能の不調を招きますが、栄養因子を補うことで改善する場合があります。私たち栄養神経科学講座は、栄養科学と神経科学を融合した新しい研究領域で、栄養因子が高次脳神経機能を調節する仕組みの解明に取り組んでいます。

モデル生物を用いた研究アプローチ

私たちの研究ミッションを果たすためには、複雑な脳機能を相手にしなければなりません。私たちは、この困難を解決するために単純で小さな脳にもかかわらず、記憶や睡眠行動などの高次脳機能を有するモデル生物(ショウジョウバエと線虫)を研究に用いています。次に私たちの研究の一部を紹介します。

内分泌系による脳機能の可塑的調節 (石元広志)

内分泌系は、環境と脳機能を繋ぐ重要な生命システムです。驚くべきことに、ショウジョウバエにも、ドーパミンやインシュリンなどヒトと共通する内分泌因子が存在し、その働きも私達と非常によく似ています。内分泌因子の中でも、ステロイドホルモンは脳神経系に様々な作用が知られています。私たちは、昆虫ステロイドホルモンがショウジョウバエの記憶や睡眠を調節する事を初めて発見しました(参考文献1-5)。この発見で得た知見や技術を基盤にして、未だ謎に包まれている様々な内分泌因子や栄養因子の脳機能調節の分子神経作用の解明を目指します。

線虫を用いた脳腸相関の研究(野間健太郎)

生物は遺伝要因と環境要因の影響を受けて生きています。線虫は遺伝要因と生命現象の関係を調べるのに非常に適したモデル生物であり、私たちはこれまでに遺伝要因がどのように神経発生に影響するのかを研究してきました(参考文献6-7)。また、遺伝学的手法の開発を行うことによって、新しい切り口でこの課題に取り組んでいます(参考文献8-9)。本講座では、もう一つの大きな要因である環境、特に腸から吸収される栄養に着目し、これがどのように神経系に影響を及ぼすのかを調べています。さらに遺伝学的手法を組み合わせることによって、その作用メカニズムを明らかにしたいと考えています。

産学協同研究部門 栄養神経科学講座

参考文献

  1. Ishimoto H, Wang Z, Rao Y, Wu CF, Kitamoto T. A novel role for ecdysone in Drosophila conditioned behavior: linking GPCR-mediated non-canonical steroid action to cAMP signaling in the adult brain. PLoS Genet. 2013;9(10)
  2. Ishimoto H, Lark A, Kitamoto T. Factors that Differentially Affect Daytime and Nighttime Sleep in Drosophila melanogaster. Front Neurol. 2012 Feb 27;3:24.
  3. Ishimoto H, Kitamoto T. Beyond molting--roles of the steroid molting hormone ecdysone in regulation of memory and sleep in adult Drosophila. Fly (Austin). 2011 Jul-Sep;5(3):215-20.
  4. Ishimoto H, Kitamoto T. The steroid molting hormone Ecdysone regulates sleep in adult Drosophila melanogaster. Genetics. 2010 May;185(1):269-81.
  5. Ishimoto H, Sakai T, Kitamoto T. Ecdysone signaling regulates the formation of long-term courtship memory in adult Drosophila melanogaster. Proc Natl Acad Sci USA. 2009 Apr 14;106(15):6381-6.
  6. Noma K, Goncharov A, Jin Y. Systematic Analyses of rpm-1 Suppressors reveal roles for ESS-2 in mRNA splicing in Caenorhabditis elegans. Genetics. 2014 Nov;198(3):1101-15.
  7. Yan D, Noma K, Jin Y. Expanding views of presynaptic terminals: new findings from Caenorhabditis elegans. Curr Opin Neurobiol. 2012 Jun;22(3):431-7.
  8. Noma K, Jin Y. Optogenetic mutagenesis in Caenorhabditis elegans. Nat Commun. 2015 Dec 3;6:8868.
  9. Noma K, Jin Y. Optogenetic random mutagenesis using Histone-miniSOG in C. elegans. J Vis Exp. 2016 Nov 14;(117).
部門名 産学協同研究部門
グループ名 栄養神経科学講座
代表者名 石元 広志
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研究グループ

脳神経回路研究ユニット部門
産学協同研究部門