センター長からのメッセージ
平成29年度から、名古屋大学大学院理学研究科附属ニューロサイエンス研究センターが創設いたしました。本研究センターでは、名古屋大学の特徴である「小型動物をモデルとした世界水準の神経科学研究」をより一層発展させ、厳格な基礎研究に基づいた神経科学の最重要課題に取り組みます。
人間は、柔軟に考え臨機応変に行動することで、日々変わりゆく環境世界を生き抜いていきます。また、芸術家は作品を創作し、作曲家は音楽を創造し、作家は小説を書き、科学者は独創的な研究をします。このような、現状打破していく原動力も、クリエイティブでオリジナリティの高い創作活動も、日々を滞りなく淡々と過ごしていく人間の強さも、脳のいとなみによって作り出されています。では、脳の柔軟性や可塑性は、どのように実現されているのでしょうか?
本研究センターでは、小規模動物の脳の動作原理を研究することで、この人類最大の謎にチャレンジします。今後、本研究センターが国際的なハブとなり、第一線で活躍する国内外の神経科学研究者との活発な交流を通し、脳科学における革新的概念を創出することを目指します。本研究センターをさらに展開させることで、コミュニケーションの成り立ち、起業家精神、経済や政治の動向、芸術の意義など、あらゆる人間活動の生物学的基盤を理解したいと考えています。
また、本センターは、脳機能が破綻することで生じると考えられる、精神・神経疾患の発症機構や、健康維持や老化の仕組み解明にも、取り組みます。本センターの創設と同時に、雪印メグミルク社による産学協同研究講座「栄養神経科学講座」が開講いたしました。この講座では、線虫とショウジョウバエを用いた厳格な研究を行うことで、人間の脳と健康の関係について、深く探究していく所存です。
森 郁恵 ニューロサイエンス研究センター センター長
生命理学専攻 教授